大会・研修会報告
令和4年度 第1回学校歯科研修会(録画配信)
当初はハイブリット形式:(対面+Web)での開催を予定しておりましたが、新型コロナ第7波拡大状況に鑑みた結果、録画配信の研修会に変更になりました。なお、参加予定者への配信はすでに終了しております。
医療法人社団道俢会 カワシモ歯科診療所 顧問(前森歯科医院 院長)森 修二 先生に演題:「スポーツにおける歯科医学からのアプローチ」~マウスガードによる口腔外傷予防について~ご講演いただきました。
森先生はスポーツデンティストのエキスパートとして、長年マウスガードの普及や、東京2020オリンピックをはじめ数多くのスポーツ大会メディカルスタッフとして、救急体制での医科・歯科連携の実践経験を積まれています。
6月6日公布「札幌市歯科口腔保健推進条例」の中で(基本的施策)第9条(15)「スポーツに伴うけがの予防及びスポーツの競技力の向上を目的とした歯科医学的根拠に基づく取組の普及に関すること。」の文言が明記されました。また、札幌市は「2030年冬季オリンピック・パラリンピックを北海道・札幌に。」と招致を目指しています。今後より一層スポーツ歯学が重視、発展すると思われます。
ソフトボール上野由岐子選手などの活躍で、マウスガードの必要性とその効果が、競技者のみならず一般の方にも広く認識されてきています。顎口腔領域のスポーツ外傷には、歯の外傷、顎骨骨折、口腔周辺部裂傷、顎関節疾患、脳振盪等があります。これらの予防安全の役割をマウスガードは有しています。また、スポーツパフォーマンスの向上にも関与しています。各種スポーツ団体での義務化や推奨も多くなっています。
カスタムメイドマウスガード作製で使用する成型機には加圧型と吸引型(バキュームタイプ)があります。マウスガード材はEVA(エチレン酢酸ビニルアセテート)を使用します。
吸引型のマウスガードの作製手順です。
(1)印象採得
(2)模型の作製
(3)シート(マウスガード材)の選択
(4)成型機にシートをセット
(5)成型台に模型のセット
(6)シートの加熱
(7)模型上へのシートの降下
(8)吸引成型
(9)シートから模型の切り出し
(10)トリミング
(11)咬合調整
(12)研磨
主なポイントとしては以下であります。
イ)模型の気泡をなくすと安定したマウスガードになる
ロ)一般的には3mm~4mmぐらいのシートを使用
ハ)シートが軟化して2cmから3cmほど垂れ下がったら模型に素早くかぶせる
ニ)吸引後の冷却時にシートにエアーをかけるとよい
ホ)加圧型成型機で加圧したものの方が適合がよい
ヘ)歯型がでているとホールドがよい
ト)第1大臼歯までの外形で十分安定する
チ)第2大臼歯までにすると開口になるし、嘔吐感が出ること多い
リ)上顎前歯唇側部の厚みは3mmぐらい確保してほしい
ヌ)臼歯部咬合面の厚みは2mmほどあれば大丈夫
ル)軟化時にあまりやわらかくすると咬合面がうすくなってしまう
ヲ)咬合調整では咬合面をバーナーで軟化する方法もあり
ワ)軽度噛みしめ時に対合歯がすべて接触すると、より衝撃吸収するし、顎位も安定
カ)かみ合わせの状態がよいと頭の位置が安定し、体全体の重心も安定
学校歯科保健活動の「歯・口の健康づくり」でも病気ばかりでなく外傷に対しても、自らの体を大切に守るための態度や習慣を身に付けることは重要です。安全教育、安全管理の面からもマウスガードの推進、普及が望まれます。
(辻村祐一 記)