令和4年度第73回指定都市学校保健協議会

 令和4年6月5日(日)、標記協議会が熊本市学校保健会、熊本市教育委員会の主催によりオンライン配信で開催されました。主題は「たえず変化する社会環境に応じて、 健康でしなやかに生きる力を育む学校保健の推進」でした。

 

【記念講演】

演題「新型コロナウイルスワクチンの開発状況」

講師 KMバイオロジクス株式会社 代表取締役社長 永里 敏秋 氏

 開会式、全体協議会終了後、記念講演がありました。今回の講師はKMバイオロジクス株式会社 代表取締役社長 永里敏明氏で「新型コロナウイルスワクチンの開発状況」について講演していただきました。最初は会社の概要や取り組みについて説明いただきました。続いて今回のテーマのコロナウィルスワクチンについて、子供にも安心して接種できるワクチンをつくるため日々研究しているとのこと。若年層のワクチンの接種率の低迷や、若年層の感染率の高さにより、より安全なワクチンをつくりたいとのこと。今、若年層がかかりやすく、そこから家庭内クラスターが起きるのを防げないのが現状である。そこで、若年層にもっとワクチンを接種してもらいたいとのことで開発したのが、不活化ワクチンであるKD414であり、早ければ今年度中の認証を目標にしているとのことです。できるだけ早く接種できるようになり、今の現状を脱することができればと思います。                 

(伊藤大亮 記)

○課題別協議題 第1分科会【健康教育】

協議題:生涯にわたり主体的に心身の健康を保持増進する力を育む健康教育       

〔№2〕名古屋市における学校歯科保健教育の取組  

            名古屋市学校歯科医会 会長 伊藤 裕一郎

 

「学校における歯科保健教育」

 他律的健康づくりから自律的健康づくりへの転換期でもあり、親による仕上げ磨きが減る小学3年生を対象に、市内全校で歯垢染色を行う歯科保健教育を実施している。

 名古屋市からの委託事業として「名古屋市学校歯科12〇(イチニイマル)運動」を実施している。12歳児のむし歯ゼロを目標とし、歯・口の健康がマルの状態になるように、小学1年生で親子セミナー(健康教育と親子で歯垢染色による仕上げみがき指導)を9校にて行っている。                  

 同じく委託事業として「名古屋市歯科疾患特別健診」を (小学校34校・中学校1校)にて実施している。主に小学4年生を対象に春期の健診後に歯みがき指導を行い、秋期の2回目健診のときに歯肉炎が改善されているかを評価し保健教育に生かしている。最近は鏡の代わりにタブレット端末のカメラで撮影記録し比較する試みもはじめている。

 1994年作製保健教育用ビデオ「歯肉が危ない」の改訂版を製作している。

 

「参加型事業による歯科保健教育」

 6月の歯と口の健康週間に「歯をまもるよい子の会」を(株)サンスターのファミリーミュージカルと共催して全小学校から3家族ほど参加を募り開催している。冒頭で歯科衛生優良校表彰を行い、優秀な学校の取り組みを学校代表の児童が発表している。また、6歳臼歯のみがき方、食生活習慣、フッ化物応用、歯ブラシ交換時期の話をクイズ形式で行っている。

 秋期には名古屋歯科医師会開催の「なごや8020フェスティバル」の会場にて歯と口の健康に関する図画ポスターコンクール作品の展示を行っている。また、PCを使ったクイズも行っている。

 

「地域との連携による歯科保健教育」

 小学校の校外学習の場として県歯科医師会に常設されている「歯の博物館」への訪問を推進している。

 学校歯科健診のみではなく、時間や環境、器材の充実した歯科医院での受診を推奨するため、「健診結果のお知らせ」の裏面にイラストなどを用いて解説している。

 また、名古屋市だけのローカルルールでCOまたはGOが検出されただけでも、かかりつけ歯科医への受診勧告をしている。                               

(辻村祐一 記)

 

〔№4〕神戸市におけるフッ化物応用事業の取り組み 

     神戸市立明親小学校 学校歯科医 山本 哲也

 

 平成28年に「神戸市歯科口腔保健推進条例」が施行され、現在「こうべ歯と口の健康づくりプラン第2次」として歯科口腔保健を推進している。幼稚園・保育所ではフッ化物洗口が行われており、学校における継続が課題となっている。神戸市歯科医師会では、神戸市教育委員会・神戸市保健所・兵庫県歯科衛生士会・神戸市シルバー人材センターと協力し、フッ化物応用事業を小学校4校においてモデル事業として進めている。

(1)フッ化物応用事業の計画は神戸市教育委員会、神戸市保健所、兵庫県歯科衛生士会、神戸市歯科医師会等で協議し決定する。

(2)関係各所の調整、器材の準備は神戸市教育委員会・神戸市保健所が行う。神戸市歯科医師会は児童への講話、学校職員・保護者・シルバー人材等への説明会・研修会を行う。

(3)フッ化物洗口のモデル校2校、フッ化物塗布のモデル校2校を指定する。モデル校は小規模校とし対象は全て2年生とする。

(4)フッ化物洗口は週1回法(0.2%フッ化ナトリウム・900ppmオラブリス洗口液0.2%を使用)とし、事業の実施は研修を受けた神戸市シルバー人材センターが行う。(人材センターに登録している歯科衛生士が必ず1名参加)

(5)フッ化物塗布事業は神戸市歯科医師会・兵庫県歯科衛生士会が行う。年間1回「学級活動」の中で、学校歯科医による講話と歯科衛生士によるフッ化物塗布を行う。 (2%フルオールゼリーを使用)

 令和3年12月現在、フッ化物洗ロモデル校である2校については問題なく実施されている。フッ化物塗布モデル校では2月の中旬に実施予定。フッ化物応用の効果の判定・事業の拡大・充実をどのように行うかなどが今後の課題である。                           

(大川晋一 記)

 

○課題別協議題 第2分科会【保健管理】

協議題:子どもの健康の保持増進を図るための保健管理

〔№4〕子どもが安心して過ごせる学校保健活動

    ~食物アレルギー対応に関する校内体制づくりと保険教育を通して~

    岡山市立吉備小学校 養護教諭 北原 章江

 

 岡山市学校保健会小学校保険部会北区2ブロック(北区2)の小学校ではマニュアルに沿った食物アレルギーの対応が行われているが、全職員で情報を共有し気を付けていてもヒヤリハットの事例が起こっているのが現状である。

 そこでマニュアルに基づく対応の徹底、教職員に対する研修の充実、関係機関との連携体制の構築等、各校での実態や取り組みについて北区2の養護教諭と保健主事を中心に共同研究を行った。

 

(1)食物アレルギー対策委員会の開催

 年度初め:実態の把握、前年度の決定事項の再確認

 年度末:今年度の対応の共有、来年度の取組について決定

 臨時:ヒヤリハットや事故が起こった場合、対応の一部変更を検討する必要がある場合、保護者への働 

 きかけを検討する場合等

 

(2)校内研修の実施

 エピペンの打ち方の抜き打ちチェック

 緊急時のシミュレーション訓練

 アクションカードを用いた緊急対応訓練

 学校医による講和

 

(3)評価方法

 校内研修アンケートを実施

 

(4)成果と課題

 全ての教職員が緊急時に対応するための校内体制と、それを踏まえた保健教育の基盤ができた。対象児童の実態に合わせて指導することができた。研修を実施しても教職員の食物アレルギーに対する意識の高さや校内体制の徹底について学校により差がみられた。                

(堀 稔 記)

 

○課題別協議題 第4分科会【地域保健】

協議題:学校・家庭・地域の連携協働による学校の保健活動

〔№4〕学校・家庭・地域の連携協働による学校の保健活動

   (5題の発表のうち、食育に関しての発表があったので掲載します。)

 

   未来をたくましく生きる、食べること大好きな新和っ子の育成

   ~学校・家庭・地域で取り組む食育~

   さいたま市立新和小学校 教諭 太田 泰貴

 

 食育に関して、食に関する授業、講師を招いての講義・講演、図書資料の活用などを通して実践を行い、給食に関して、体験学習や地場産物の活用についての取り組みを行った。

 特に、農業体験を行ったり、地元の食材を使った給食や近年生産が増えたヨーロッパ野菜を使った給食など、食育に関する掲示物の工夫も行った。 

 常に「食育とは何か」という問いを持ち続けながら研究に取り組んでいた。その過程で間違いなく言えることは「食育は生きる源を育むこと」である。学校・家庭・地域が協働して取り組むことが重要であると感じ取ることができた。

 

他の演題は、

・体育館の照度についての調査報告

・養護教諭の特性を活かした現代的健康課題に対する学校・家庭・地域の連携協同のコーディネート

・学校・家庭・地域の連携協働による学校保健活動~学校保健委員会を中心とした健康教育〜

・多様性豊かなこどもたちをみんなで支えるとりくみ~おとなもこどもも笑顔で成長していくための関係 

 づくりをめざして~

(齋藤 嘉高 記)