第86回全国学校歯科保健研究大会(Web)(山梨)

 10月20日(木)、令和4年度全国学校歯科保健研究大会が山梨会場とオンラインのハイブリッドで開催されました。主題および副題は「口腔から全身の健康づくりを目指して~未来の生活を支える学校歯科保健~」でした。

 

【特別講演】

  演題「マリ共和国農村部における人々の健康づくりついて」

  講師 カラ西=西アフリカ農村自立協力会代表

     日本歯科大学名誉博士(歯科医師)

     村上 一枝 氏 

 

 健康であれば農作業も可能で食料や収入も得ることができ、貧困からの脱出、家庭暴力のない穏やかな家庭になる。

 

【基調講演】

  演題「健康診断後の事後措置の展開について」~歯・口腔の健康診断から自律的自己管理能力の向上を図る事後措置の考え方~

  講師 明海大学 学長 安井 利一 氏

 

 事後措置の存在しない健康診断は意味が薄い。医療機関のない場所で病気を発見することのむなしさに等しい。つまり、健康診断の重要性とその価値は事後措置の在り方と一体化している。

 

【シンポジウム】

 「健康診断後の事後措置の展開について」

  座長 公益社団法人日本学校歯科医会 

  副会長 野村 圭介 氏

  文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課

  健康教育調査官 松﨑 美枝 氏

  足立区立第十中学校 主幹教諭 平澤 規子 氏 

  東京都学校歯科医会 会長 鈴木 博 氏

 

 地域教育委員会・学校・学校歯科医・地域歯科医師会・地域歯科医療機関と連携して、歯科健康診断の実施や結果通知などの事後措置を円滑に行う。特に歯列・咬合での結果通知においては配慮が必要で、保険適用外となる歯科矯正治療ということから、本人・保護者に適切に判断できる工夫や結果内容を示すことが求められる。また、学校から健康相談などをお願いされた場合は、健診結果をもとに必要な児童生徒・保護者に一層丁寧な情報提供に努めるようお願いしたい。

 今後は、診断結果のICT化やタブレット使用などで保健教育につなげるとより効果的で、また継続した受診勧告や臨時健康診断の活用が望まれる。

(辻村 祐一 記)

 

【領域別研究協議会「小学校部会」】

 まずアドバイザーの鶴見大学歯学部小児歯科学講座 朝田 芳信 教授から「学校歯科保健教育の重要性について」と題して講演が行われ、その後小学校2校から実践発表がありました。

朝田教授からは、

・学童期におけるむし歯予防の大切さ

  • 永久歯の萌出状況からみた発症リスク
  • 歯みがきの発達段階
  • 仕上げみがきについて
  • 歯ブラシの毛先の面を使い分ける
  • 口腔清掃補助用具を上手に使う

・学童期における歯周病予防の大切さ

  • 学童期の口腔健康行動を成人期の歯周病予防につなげる
  • 歯周病と全身疾患の関連性について

・口腔機能を発達させる

  • よく噛んで食べる力を育む噛むことと全身の健康について講演されました。

 その後、山梨県甲斐市立竜王南小学校、福島県喜多方市立第一小学校から発表がありそれぞれの学校では長期にわたり保健活動を行っていて、習慣作り、継続の大切さについて強調されていました。その後のディスカッションでは、朝田先生の講評があり、第2大臼歯への対応や指導内容についての実践では、生徒に成功体験をさせることが大事との意見が出されました。

(齋藤 嘉高 記)

 

【領域別研究協議会「中学校部会」】

 中学校部会は、研究発表に先立ち、日本大学歯学部衛生学講座 川戸 貴行 教授よりアドバイザー導入として、中学校の歯科保健と歯周病予防について、

①歯周病の原因と生活習慣の改善方法の理解と実践

②歯周病や口臭の原因と予防等に関する理解

の2点の項目について、ご自身の専門的見解から説明がありました。最後に学校歯科保健における学校歯科医の役割として、生徒の主体的な疑問、質問に対して正しい情報を提供して、解決を支援する事がとても大切であると結論付けられました。

 研究発表では、

①ともにつくりあげる健康教育を目指して

②健康課題の解決に主体的に取り組み、実践することのできる生徒の育成を目指して

と題して、山梨県山中湖村立山中湖中学校、忍野村立忍野中学校、群馬県東吾妻町立東吾妻中学校からそれぞれに発表が行われ、その内容に対しての川戸教授の講評、ディスカッションとなりました。まとめとして、座長の日本学校歯科医会 柴田 宏 理事より、昨年度より学習指導要領の改定で教科書に歯周病の項目が取り上げられた事が、今後の中学校における歯科保健の取り組みが進む追い風になるのではないかと結ばれ、全ての講演が終了しました。

(山口 勝 記)

 

【領域別研究協議会「特別支援教育部会」】

 初めにアドバイザーを務める昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座 弘中 祥司 教授 より「障害のある子供の教育支援における歯科保健のあり方とは?」と題して講演が行われました。

・特別支援教育と法整備

・学校歯科保健の現状と今後

・障害者の口腔保健上の特性

・歯科保健指導、管理とその困難性

・障害児者の特性

 についてお話しされました。

 その後、山梨県立甲府支援学校から口腔保健センターとの連携により歯科医による摂食指導が行われた事例について、青森県立森田養護学校からはコロナ禍における継続した歯科保健活動への取り組みについて報告されました。

 ディスカッションでは、重度の障害を持つ子供たちの割合が増えてきていることやその対応について等について話されました。

(堀 稔 記)