令和5年度第1回学校歯科研修会

 令和5年10月28日(土)午後3時よりWeb併用で第1回学校歯科研修会が行われました。

 講師は公益社団法人日本学校歯科医会の常務理事 澤田 章司 先生をお迎えして、「スポーツ歯科と安全教育~マウスガードの取組~」という演題で約2時間講演頂きました。聴講した人数は、会館での聴講14名、Zoomウェビナーでの聴講42名で参加者計56名でした。澤田先生は1927年(昭和2年)歯科医院創業の3代目院長として、訪問診療、市民企画講座、東京地方裁判所民事調停委員など幅広く活躍されています。

現在の「学校保健安全法」は昭和33年に制定された「学校保健法」に学校内での安全管理に関する条項が追加されたものです。この変更は、歯科保健活動によってDMFTが減少している一方で、外傷によって歯を失うことが依然として減少しておらず、学校における教育活動を安全な環境で行う重要性が高まっていることに起因しています。

「学校保健安全法」には2つの重要な要素があります。

1つ目は学校歯科医による教職員への指導と教育です。学校内での安全管理情報の共有や児童生徒の問題理解の促進を通じて、事前に危険を予測し、解決策を見つける力を養うことが可能となります。

2つ目は、もし学校で事故が発生した場合、学校歯科医やかかりつけの歯科医が「災害共済給付制度」の手続きと内容に関する情報を共有する必要がるということです。

学校での「歯・口の外傷」の発生件数は、部位別に比較しても多く、予防対策が喫緊の課題となっています。児童生徒、教職員、指導者などが安全教育を理解するために、学校歯科医が積極的な役割を果たすことが求められます。特に、スポーツによる大きな外傷は児童生徒の生活の質(QOL)に直結するため、その重要性はますます高まっています。体育や部活動への積極的な参加、危険の予測、マウスガードの学習などを通じて、事故を未然に防ぐ体制の構築が必要です。

 

■研修会でのポイント

(1)歯と口は障害が残るようなけがが多いのが特徴である食べる、話す、笑うといった機能が損なわれ日常生活に支障を来たし、脳機能および運動能力に影響をおよぼすことがあるため予防としてマウスガードが有効である。

(2)障害見舞金給付件数は過去10年間で全障害4,418件のうち歯牙障害が996件である。

(3)中学生と高校生に歯牙障害が多く発生している

(4)永久歯のけがは上顎前歯に集中している

(5)主体の要因、運動の要因、環境の要因、用具の要因、それぞれに事故の対策が必要である

(6)脱臼した場合は保存液か代用として牛乳に入れて乾燥を防ぐことが大切である

(7)マウスガードはパフォーマンスを上げることよりもけがを防止することが重要である

(8)医療費の請求は1ヶ月ごとに行う

(9)文書料は日本医師会、日本歯科医師会の会員、非会員問わず無料であ

(10)後の障害見舞金の給付に大きく関係するため、病名の記載漏れがないように十分注意する(後で病名を加えることが出来ないため)

(11)歯牙完全脱臼し再植した場合は、歯科補綴を加えた本数に算入されない

(12)上下切歯8本のうち、2歯欠損の場合は、隣在歯の状況を考慮することなく第14級と認定し直ちに障害見舞金の請求が出来る

(13)障害見舞金の給付は学校生活能力の喪失を伴うものが対象で自由診療の費用として給付されるものではない

(14)障害見舞金が該当しない1歯以上の欠損の 場合は歯牙欠損見舞金を支給する

 

■最後に歯・口のけがを防ぐための10箇条

 <日頃からの管理と指導>

(1)朝、授業や活動の途中・前後に健康観察すること

(2)食事、運動、休養・睡眠の調和のとれた生活と敏捷性や調整能力などの基礎的な体力づくりに努めること

(3)施設・設備や用具、教室や運動場などの安全点検を行い、環境を安全に整えること

(4)活動場所や内容、運動種目などに応じた安全対策を行うこと

(5)危険な行動などを見つけたら、改善のための指導を行うこと

(6)安全な活動や用具等の使用に関するルールを決め、お互いに守ること

 <危険を予測・回避するために>

(7)事故の事例や「ひやり・はっと」した場面などを題材に、危険予測・回避の学習する

(8)体の接触、ボールやバット、ラケット等に当たることが多い運動では、マウスガードの着用も検討する

 <けがをしてしまったら>

(9)けがをしたところを清潔にし、応急手当する

(10)抜けた(欠けた)歯を拾って、速やかに歯科医を受診する その際歯根は触らないように注意する

 

 今回の講演会は歯科医だけでなく学校関係者も参加しました。子供たちのために何ができるか、どのように協力できるかについて共に考えることができ、とても素晴らしい機会でした。

(渡部 哲也 記)