令和5年度北海道学校歯科保健研修会

 10月7日(土)令和5年度北海道学校歯科保健研修会が北海道歯科医師会館にて開催され、44名が参加した。『「生きる力」を育む学校での歯・口の健康づくり』に学ぶ学校歯科保健活動からスポーツ歯科まで という演題で、公益社団法人日本学校歯科医会・顧問、一般社団法人日本スポーツ歯科医学会・理事長の安井利一先生が講演された。

 

○学校関連法規の趣旨と内容について

学校の学習指導要領改訂の方向性として、育成すべき資質・能力の三つの柱に「学びに向かう力・人間性等」「知識・技能」「思考力・判断力」があり、より考える能力を育成しようという方向に向いている。児童や生徒に「なぜ」と考えさせるような教育に力を入れている。

 

○就学時の健康診断マニュアルの改訂

16年ぶりに改訂された。

<改訂のポイント>

①発達障害に関するスクリーニング

②食物アレルギー

③歯科では、COを検出すると共に「う蝕多発傾向者」を設定

④虐待・ネグレクトについて章立て

 

○スポーツ歯科について(スポーツ歯科医学の目標)

①スポーツによる国民の健康・安全づくりを支援する歯科医学的配慮

 平成元年に始まった8020運動は30年余りが経過し、既に8020達成者は、令和4年に厚生労働省が実施した歯科疾患実態調査によれば51.6%となっている。8020運動の20本という歯数は「食べる機能」から導き出したものであるが、スポーツ歯科臨床の立場では、運動・スポーツがよりしやすくなるという効果も予測されている。また高齢者においては、生活を自立できることや安全に行動できることが大切である。

 

②顎顔面口腔領域でのスポーツ外傷を予防するためのサポート

 顎顔面口腔領域の外傷の予防ならびに対応は、歯科医師の積極的な対応が望まれる領域である。口腔外傷の予防においては主体管理と環境管理の両面から考える必要がある。

 主体管理ではマウスガードの使用が推奨される。我が国でマウスガードの普及が進まないのは、安全教育が実施されていないからである。歯科医師の安全教育への貢献が大いに期待される。

 

③スポーツ競技力の維持・向上を支援するための歯科医学的配慮

 咬合と競技力との関係、競技種目と歯列・咬合の特性、あるいは咬合挙上や咬合接触面積と競技力などが挙げられる。子供の競技力も成人期以降の競技力も歯や咬合の状態によって向上することができるであろう。歯科はより積極的な咬合の確立を通じて、国民がスポーツに取り組みやすくなる状況を創り出せる可能性を秘めている。

 

(山本 崇 記)