令和5年度 第74回指定都市学校保健協議会(Web)

 6月11日(日)第74回指定都市学校保健協議会が福岡市学校保健会、福岡市教育委員会の主催にてオンライン開催された。主題:「たくましくしなやかに生きる子どもたちを育む学校保健の推進」

 

〇課題別協議題 第2分科会 【保健管理】

協議題:心身ともに健康で安全な生活を送るための適切な保健管理

〔No.3〕知っておきたい歯のけが・口のけが ~バスケットボール指導者への調査から~

横浜市歯科医師会学校歯科医部会 横浜市立川井小学校学校歯科医 齋藤 牧 先生

 

我が国のバスケットボール(バスケ)競技登録人口はサッカーに次いで多く、独立行政法人日本スポーツ振興センターの調査では「どんな場面で受傷したか」の質問で「体育活動中(部活動も含む)」が78%、そのうち「どんな運動をしていたか」という項目では「球技中」が76%を占める。その中でもバスケ、サッカー、バレーボール、野球の順で多く、特に部活動で、歯の破折、脱臼、脱落、歯槽骨骨折が多々みられる。そこで、横浜市教育委員会及び横浜市スポーツ協会と協働して、市内ミニバスケチーム・中学校、高校のバスケ部の指導者に外傷の頻度・マウスガード・受傷の際の対応などアンケートを実施した。

・マウスガードに外傷の予防効果があることを知らない指導者14.4%

・マウスガードが脳震盪の予防に有効なことを知らない指導者61.5%

・バスケが歯の外傷で最も多い競技であることを知らない指導者87.4%

・バスケではマウスガードは無色透明のものに限ることを知らない指導者60.7%

・マウスガードには既製品と歯科医院で作製するものがあるのを知らない指導者48.1%

・令和2年度及び令和3年度に実際に唇を切る、歯が欠けるなど口のけがでの受診させた経験ありと回答した指導者7.4%

エキスパートである指導者でも周知徹底の必要があり、歯や口のけがに対する知識不足である。今後外傷の予防のためのマウスガード普及には、トップリーグなどの選手着用が有効と感じる。現在横浜では誰が見ても歯の外傷対応方法が理解できるフローチャートを作成して活用を促している。

 

〇課題別協議題 第4分科会【地域保健】

協議題:学校・家庭・地域の連携協働による学校保健活動

〔No.3〕コロナ禍における川崎市立学校の学校健診アンケート結果の一考察

川崎市歯科医師会地域保健部学校歯科委員会

副委員長 加藤 善郎 先生

 

令和3年2月に「定期学校健診についてのアンケート」と題して、コロナ禍前と比べてどのように異なった環境下での健診実施となったか等、川崎市教育委員会を通じて各学校にアンケートを依頼し、182校の養護教諭より回答。

・健診日程・時間を多く設定

・感染リスクを踏まえて、学校と学校歯科医の綿密な事前打ち合わせ

・ダブルミラー、グローブ交換、手指消毒等の感染予防対策

・フェイスガードの使用、ガウンなど感染拡大防止のための術者、記録者の装備の工夫

・健診実施は広く換気可能な場所が望ましく、パーテーションで仕切る、一方通行にするなど動線確保の工夫

・児童生徒の間隔を空け、健診を受けるまではマスク着用、私語を慎み、健診時間をずらして接触機会を減らす等

健診時間の短縮のため、家庭で事前に記入してもらえる質問票の充実・情報の一元化・デジタル化推進が有効と思われる。健診時の感染状況により健診マニュアル等の変更が必要となるし、今後は一部がスタンダード化する。今回のコロナ禍での対応を検証することで、今後の伝染病大流行や災害等で参考となり、次の世代につなげることができる。

(辻村 祐一 記)