令和5年度フッ化物洗口講習会

 2023年11月21日、札幌歯科医師会館で令和5年度フッ化物洗口講習会が開催されました。札幌市保健福祉局保健所 成人保健・歯科保健担当部長の秋野健一先生より「フッ化物洗口事業について」の講習が行われました。

 なぜ、今フッ化物が必要なのか?現在、子供のむし歯は減っているが、成人以降で治療が必要なむし歯を有している人の割合が高く、若い頃からの予防が大切である。道内のフッ化物洗口実施人数は毎週、道内10万人以上の園児、生徒がフッ化物洗口を実施している。札幌市の1歳6ヶ月健診、や3歳児健診でも約9割の子供にはむし歯がないが、その一方、3歳児で多数(4本以上)のむし歯のある者は305名。口腔崩壊の状態は38名など、大きな健康格差が存在している。

 フッ化物の働きとしては、歯が少し溶けても修復する事、酸に溶けない強い歯にする事、酸産生を抑制する事が挙げられる。科学的にみても食事のコントロールやフロスなどの使用や定期的な歯科検診よりもフッ化物の使用がよりむし歯予防効果が高い事が立証されている。

 週に1回(毎日)30秒のフッ化物洗口を行なった場合の効果としては、4、5歳から実施するとむし歯を約半分ぐらいにできる。6歳から実施した場合には約30%のむし歯を予防できる。つまり、早い時期にフッ化物洗口を実施した方がむし歯の予防効果が高いことが分かる。

 フッ化物洗口を集団で行うメリットとしては、個人応用に比べ、継続性が保たれ、確かな成果が期待できる事、むし歯予防を十分行えない家庭環境の子供でも、周りの大人の努力で歯の健康を守る事が挙げられる。

 フッ化物洗口の頻度と使用薬剤は、毎日法(週5回)では250(225)ppmまたは450ppmの濃度のフッ化物を、週1回法では900ppmの濃度のフッ化物を5〜10mlの洗口液でブクブクうがいを行い、洗口後30分間はうがいや飲食を避けるようにする。

 ミラノール®︎、オラブリス®︎といった顆粒の市販薬剤は劇薬とされているが、水に溶解した洗口液は基準濃度以下なので、劇薬ではない。

 そもそも、フッ素は自然の中にある元素の一つであり、海水では12番目に多い元素であり、人体では13番目に多い元素でもある。食事や水により日本人の1日あたりのフッ素の平均摂取量は1〜2mgだが、フッ化物洗口による1日あたりの摂取量は約0.2mgであり、食事で摂取するフッ素の1/10の量となる。

 フッ化物による急性中毒は、約2mgF/kg以上で軽い症状(吐き気、腹痛、下痢などの胃腸症状や唾液がダラダラ出る)が現れる。また5mg/kgでは治療や入院などの処置が必要となる。園児(体重20kg)が、フッ化物洗口を週1回法で実施している場合、この洗口液5ml中のフッ素量は約4.5mgなので、一度に9人分以上の洗口液を飲み込まなければ、急性中毒の心配はない。

 50年前からフッ素摂取の有害性や危険性に関する反対意見があったが、今現在フッ素が原因の健康被害は起こっていない。

 その後、札幌歯科医師会 学校歯科担当理事の佐藤友昭先生より「フッ化物洗口の具体的な実施手順について」の説明がありました。

 麻生明星幼稚園の例がまず示された。4歳児と5歳児(合計50名)を対象に週1回法で実施されている。まず、先生がアルコールスプレーで手指を消毒し、園児の持参したプラスチックコップにフッ化物洗口液を2ml入れる。先生は1分間を測りながら洗口を開始する。1分間のうがい後は、自分のコップに吐き出して流しに捨てる。保護者がフッ化物洗口を希望しない園児は真水でうがいを行う。

 フッ化ナトリウム製剤の種類にはミラノール顆粒11%と、オラブリス洗口用顆粒11%がある。ミラノール顆粒11%には1g中フッ化ナトリウム110mgが含まれており、1g、1.8g、7.2g、500g梱包のものがあり、使う量や人数によって、各梱包を使い分ける。

 オラブリス洗口用顆粒11%は225〜450ppm(1.5g)、900ppm(6g)梱包のものがある。フッ化物洗口液の作り方はミラノールの場合(週1回法)、ミラノール顆粒11% 1.8g 5包に500mLの水道水を加え軽く振って溶かす。これで900ppmFの濃度となる。専用の分注ポンプは1プッシュで5ml出るので、これで約100名分のフッ化物洗口液ができる。

 続いて札幌市のフッ化物洗口支援事業についての説明がありました。

 札幌市ではフッ化物洗口の実施を希望する保育所・幼稚園・認定こども園に対して、フッ化物洗口の実施に必要な物品の提供や専門家の派遣を行う「フッ化物洗口支援事業」を実施している。フッ化物洗口を行うことにより、多くのこども達に高いむし歯予防効果が期待できる。対象年齢はブクブクうがいのできる4歳児、5歳児で保護者の承諾がある児童。

 フッ化物洗口の意義や方法について、保育所等に講師を派遣し、職員向けの勉強会や保護者向けの説明会を行います。フッ化物洗口に関心がある、実施に不安があるのでまず説明を聞きたい、札幌市からの支援内容について詳しく知りたいと言った保育所等からの申し込みをお待ちしています。

 

(山本 崇 記)